Cross Talk Story

「菊水」を舞台に、
進化していく料理

一皿に盛るときの鮮やかさ、そこから感じるしずる感、お客様の目の前にその一皿が届いた瞬間をイメージして、「お客様の美味しい!の笑顔をみるための一皿」をつくる。 ずっとこの先も変わらない、私たち料理人としての魂です。(大筆)

株式会社バルニバービ 執行役員 総料理長 大筆秀樹

株式会社菊水 「南禅寺参道菊水」料理長 西野悌司

料理

「菊水」を舞台に、進化していく料理

西野:「菊水」では20年間、伝統的な京料理を提供してきました。鯛の昆布〆や鮎の小袖寿司などです。四季折々の変化はありましたが、この度のリオープンに際して一番大きな変化は、日本料理「柏屋」の主である松尾氏にプロデュースいただいたことです。

地産地消の精神で、素材の味を活かすことは当たり前に、調理法や器、盛り方・・・今までとは違った視点を取り入れています。

“お客様の口に入る瞬間に最高の一皿として提供する”

そのために、素材や器などのいいところをどう引き出すか、
また会席として提供するうえで、トータルの「旨み」と「世界観」のバランスも大切にしています。

例えば、この器。
金沢にある須田菁華さんの器で、昼の会席の「八寸」に使用しています。

「八寸」とは、もともと、“一期一会の機会”として、亭主となり客として出逢った喜びを込めて、亭主と客が盃をかわす場面で提供されるものだといういわれがあります。八寸四方の盆を使い、酒の肴として、海のものと山のものを合わせて出すのが決まりです。

素材の季節感や美味しさ、また和食ならではの調理法による献立としての「旨み」はもとより、盛り付けや背景、伝えたい思いなどの「世界観」を一皿に盛り込みながら、料理全体としてのバランスを大事にしています。

株式会社菊水
「南禅寺参道菊水」料理長
西野 悌司

料理に隠れた背景と新しい挑戦

西野:「南禅寺参道 菊水」の和の料理は、日本の旧歴に由来した会席です。
開業時の6月は旧暦でいうと、「氷室の節句」。江戸時代の行事の一つで、暑い盛りの旧暦6月1日に、前年の冬から貯蔵していた氷をこの日に朝廷や幕府に献上し、夏には貴重な氷を口にして風流を楽しんでいました。 厳しい夏の盛りを前にしたこの時期に、人々の夏場の健康を願い、“氷をたまわう”、そんな思いを込めた御料理でおもてなしをしたいと考えた献立です。

ただ皿に品を盛るのではなく、「旨み」と「世界観」をストーリーとどう一体化させていくか、演出一つとっても新しい挑戦です。

株式会社バルニバービ
執行役員 総料理長
大筆 秀樹
対談

大筆:京都というエリア、また日本旅館という空間から“和”のイメージがついている「菊水」で料理をするという環境自体が、フレンチを主軸にずっと洋食をベースにしてきた私にとって大きな変化でした。

厨房は共有しながら使うところも多いので、西野さんの率いる和食チームを毎日目にしています。
環境の次に影響を受けたのは、和食の「出汁」です。
昆布だし、二番だし・・出汁の抽出の仕方はもちろん、素材に合わせた出汁の選定で、食の「旨み」の幅の広がりを感じています。
実際、洋食コースの料理にも、出汁を取り入れていますね。

対談

共にいるからこそできる和と洋の共鳴

西野:僕は働く場所は変わりません。だからこそ感じたのがまわりの空気感でした。大きく変化した内装から醸し出される雰囲気、またそこに来店されるお客様の層、以前とは異なる制服で働くスタッフが創りだす店の空気の変化を感じています。

もちろん、大筆さんと同じで料理の影響も受けています。特に温度管理のオイルバスという機械は初めて見ました。

大筆:オイルバスというのは、熱媒体のオイルに浸して間接的に加熱処理をし、料理人自身で調節することができる機械です。食品に含まれるタンパク質やアミノ酸と糖が科学的に作用して褐色となるメイラード反応を作ります。メイラード反応は褐色色素分子が生成され、旨味、風味、香ばしさを増幅させます。

西野:和食は鮮度のいい素材を「煮る」、「炊く」、「揚げる」、「焼く」のいずれかで仕上げていくため、調理の手法は限られています。
だからこそ「温度」という感覚は新鮮でした。
蓋物ならふたを開けるときの温度、魚ならおろし、焼き上げるまでの温度・・・その瞬間瞬間の過程に注視しています。

大筆:私は、和食ならではの「色彩」という見せ方に影響を受けています。
例えば”緑色“といっても、鮮やかな黄緑、スモークしたようなモスグリーン、深みのあるダークグリーンなど一つの色のトーンも多岐にわたります。
色そのものと組み合わせ、トーン、そしてお皿にのせた時のバランス。
美味しく”魅せる“ための美しさは、足し算ではなく、引き算をする勇気をもちながらシンプルに仕上げています。

対談

洋食はどうしても一皿完結型になる傾向があります。
洋食の文化として一人一皿というスタイルなので、それは一つの仕上げ方ではあります。
しかし、「菊水」はコースで提供しているからこそ、今までにない視点を加えています。

例えば素材。旬の素材そのものを使うことはもちろんですが、色彩と同じで、素材を加工したり、素材同士の組み合わせや食べる順番、全体のバランスを意識しています。

普通はコースだと前菜の冷菜、温菜、魚、肉という順番ですが、どうしてもメインの肉を食べる頃にはお腹がいっぱいになってしまいます。(あたり前ですが・・)
「菊水」のデギュスタシオンコースは全13品ですが、一般的にメインといわれる肉料理は真ん中の7番目に提供するように構成しています。

対談

口にいれた瞬間をイメージして、コース全体の流れを考える。
お肉が来て、その次に鰻の赤ワイン煮、地鶏のサラダと食べ頃チーズ、お肉を食べたあとでも最後まで赤ワインを飲めるテイストに仕立てています。

先日、いい甘鯛がとれたのですが、熟成させてみると〆たての魚では感じられないようないい旨み成分がでていたので、ミディアムレアでローストしています。
一口に料理といっても、昆布〆したり、熟成したり、そこには「温度」と「色彩」の視点を加えて、口にいれるその瞬間に新たな魅力を発見できるような、そんなことを毎日取り組んでいます。

対談

和と洋、刺激を与え、受けながらつくりあげる「菊水」の料理

大筆:ジャンルの違う二人が同じ空間にいることで、知らず知らずに影響を受けています。
料理人として“美味しいといわれる一皿”のために、良くも悪くも喧嘩もしますね。二人ともアツイので(笑)。

日本の古都、京都だからこその季節の移り変わりとともに、素材、空間、また知らず知らずのうちにお互いが与え、受けている「色彩」と「温度」という感覚を大事にしていきたいです。

西野:高校時代のアルバイトから始めると、僕は26年間、料理の世界、それも「和食」の世界だけをみてきました。たくさんの経験と刺激を受け、今ここに料理長としてたっています。
ライフスタイルの変化や時代の流れを体感しながらも、料理人として変わらないことは、「お客様に美味しいと感じてもらうこと」、それだけです。

大筆:一皿に盛るときの鮮やかさ、そこから感じるしずる感、お客様の目の前にその一皿が届いた瞬間をイメージしてこれからも「お客様の美味しい!の笑顔をみるための一皿」をつくる。
それはずっとこの先も変わらない、私たち料理人としての魂です。

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